WDB PARADISE


メンバーによる安全講座

これは当クラブメンバーがメルセデスベンツの安全性について調査研究し、その一部を公開するものです。

T  メルセデスの安全性についてお話します。
 1960年代、旧西ドイツでは、交通事故死者が年間1万6000人に達していました。中立な第三者機関であるDVRを設立し、対策を行いました。その中で衝突に強いボディの開発と事故の科学的分析に重点がおかれ、メルセデスのクラッシャブルボディが生まれました。また、事故調査の結果、衝突時の衝撃でドアが開放されてしまうという問題が浮上しました。ドアが開放されてしまうと乗員が、車外に放り出されてしまい死に至る危険性が高まります。そして、車体の強度が落ちてしまいます。なぜ、ドアが開放されてしまうかというと、前方から衝撃が加わるとドアが後方に移動し、ドアラックディスクや、ドアロックストライカが破壊されてしまうからです。そこで、メルセデスが考えたのは、ドアラッチ部分のドア側に太いいピンを設け、ボディ側に受けの穴を用意し、ドアが閉まっている状態では、ドア側のピンがボディにはまっている状態にしました。このようにすることで前方から衝撃が加わってもドアが後方へ移動しにくくなり、ドアロック部分の破壊が防げると同時に開放しにくいドアができたのです。これが、W126にも採用されているのです。その後、改良が進み、201,124のくさび形のドアラッチとなり、AとG以外の車種に採用されています。
 次回は、サイドインパクトビームについて  (2003/4/13)
U  アメリカには、2,3十年前からFMVSSという衝突安全基準があります。
この中に側面の強度基準があり、ドアの中心付近に静止圧力を何ポンドかかけ、ドアのへこみ(室内への移動量だったか?)が数インチ以内と定められています(現在では、この他に移動台車をぶつける試験も行われます)。アメリカに輸出するJ国の車のドア内部に補強材(サイドインパクトビーム)を入れていたのはこの基準を満足するためです。メルセデスも当然試験され、合格しているのですが、ある時、ドア内部を見たところ補強材が入っていなかったそうです。何故かと言うと、メルセデスは、ドア内部の補強パイプや鉄板を入れると側面衝突時にパイプ等が室内に進入し、乗員が危険にさらされるからです。そのため、外板の厚さを厚くし、強度を高めることで側面衝突から乗員を守っていたのです。201や124以前の車は、サイドインパクトビームが入っていないと思います。202以降の車種は、外板が薄くなったためサイドインパクトビームを入れるようになりました。乗員には、被害を与えない構造になっているようです。
 次回は、クラッシャブルボディについて。 (2003/4/19)
V  1960年代、旧西ドイツでは、交通事故死者が年間1万6000人に達していました。中立な第三者機関であるDVRを設立し、衝突に強いボディの開発と事故の科学的分析に重点がおかれました。その中で、メルセデスは、当時としては、奇想天外なアイデアを盛り込み、車の前後を潰すことで衝撃を吸収し、乗員の生存空間を確保するクラッシャブルボディが生まれました。エンジンルームと客室との境から伸びる二本の鉄の腕、これが、衝突時に縮むことで衝撃を吸収しています。よく、みなさんがフレームと言っていますが、これこそが衝撃吸収フレームでフロントサイドメンバ、リアサイドメンバといいます。
 このクラッシャブルボディは、W111通称ハネベンから採用され、現在では、世界のほとんど自動車に採用されています。しかし、衝突試験では、生存空間が確保されていた同じ型の車が、実際の事故では、大きく室内が変形している例が多く報告されました。調査した結果、ドライバは、衝突を避けようと、本能的にハンドルを左右どちらかに切るため、片側だけがぶつかるオフセット衝突であることがわかりました。その後、改良され、一本の衝撃吸収フレームが途中から、車体下部、トンネル部、ドア部の三方向に分かれ衝撃を吸収する構造になりました。これが、三叉式緩衝機構でW126から採用されています。
 次回は、「メルセデスの安全神話が崩壊した。」です。(2003/4/27)
W  1997年、ヨーロッパであるクラッシュテストが行われました。その名は、ユーロNCAP。オーバーラップ率40%、固定バリアの前に長さ54cmのアルミハニカム材をつけ、時速64kmで衝突させるオフセット試験(デフォーマブルオフセット衝突試験)でした。ここに、202が試験され★★☆☆という最悪の結果が出され、安全神話が崩壊したと誰もが思いました。
 この試験の数ヶ月前に、ドイツ技術検査協会とMS誌が共同で試験した時速55kmオーバーラップ率50%のオフセット衝突試験では、202は小型車として模範となる結果を出していました。なぜ、このように同じ車で結果が異なったのか不思議でした。メルセデスは、車両開発の過程で時速60kmのデフォーマブルオフセット衝突試験を行っています。時速4kmの差でどうしてこんなに違いが生じたのでしょうか。試験方法に問題がありました。
 バリアの前に取り付けられているアルミ材の強度が低かった場合、アルミ材での衝撃吸収がなく、時速64kmで車両がバリアに突き刺さることになり、室内まで大きく変形してしまいます。アルミ材の強度が高かった場合、車両がバリアに衝突する前にクラッシャブルゾーンが大きく変形し、その後、時速60kmくらいで残りの衝撃吸収スペースでバリアに衝突し、室内まで大きく変形してしまいます。この試験は、軽量車には優位な条件ですが、重量車には、不利になります。
 重量車がこの試験で良い結果を出すためには、より頑丈にしなければなりません。しかし、実際の交通環境では、このような車は加害性が強くなり、自分は助かるが、相手に大きなダメージを与える自己中心的な車両となります。また、ユーロNCAP主催者側は、時速64kmで衝突する場合があるということで試験速度を決めているようですが、この理論でいくと、時速100km、時速200kmで衝突することがあり得るので試験速度が無限大になってしまいます。さらに、メルセデスが調査した結果、衝突速度時速64kmで安全になった車と時速55km、60kmで安全な車とでは、生存率はほとんど変わらないという結果を出しており、むしろ、加害性が増える、リスクの方が大きいとしていました。そこで、インゴ・カリーナ氏は、試験の見直しを訴えてきましたが、ユーロNCAPの暴走を止めることはできませんでした。JNCAPも同じ試験方法を取り入れており、軽自動車というカテゴリーがあるJ国においてこの過激な試験が必要かどうか疑問です。
 T社のG☆AとH社のG−☆☆Nに疑問を抱きます。次回は、座席の強度についてです。(2003/5/7)
X  腰とくれば座席。メルセデスの座席の強度について述べます。19○○年7月夜9時20分ころ東北道、下り線、大雨、もと○○○○スのボーカルが運転するT社の最高という名の車がスピンし、ガードワイヤ、ガードレールに激突し、気がついた時には、後席に横たわっていたそうです。何故、後席にいたのか、それは、運転席のリクライニング機構が衝突の衝撃で壊れ、背もたれが倒れ、シートベルトから体がすっぽ抜けたからです。幸い、リアガラスを突き破り、車外に放り出されずに済んだのは奇跡です。これとは、対照的な事故をもう一つ、アウトバーンを時速200km近い速度で走っていたR129が衝突事故を起こし、数回横転したそうです。奇跡的にドライバは、無傷で生還したそうです。
 生還できる最低条件は、体がシートに固定されていることです。つまり、背もたれが倒れないことです。おそらくR129は背もたれが倒れなかったのでしょう。(R129は、シートベルトが背もたれと一体型ですので倒れても体がすっぽ抜けることはないと考えられます。)メルセデスの座席は、非常に頑丈にできています。衝突事故で簡単に壊れないように設計されています。J国の車のほとんどが、背もたれを支える機構が左右どちらか一方にしかついていないのが現状です。座席が頑丈であるかないかは、正面衝突、側面衝突、追突試験の結果には現れにくく、現れないならば保安基準ギリギリの設計でコストを押さえるというのがJ国の車と考えていいでしょう。メルセデスの車は、衝突試験の結果に現れない部分についてもしっかり造られているのです。(2003/5/25)
Y  メルセデスは、自車の衝突安全だけではなく、歩行者のこともちゃんと考えています。万が一、はねてしまってもダメージを少なくするため、ボンネンットを柔らかい構造にしています。202以前の車は、ボンネット内の補強材は左右に一本ずつしか入っていません。 210以降の車は、クロスに補強材が入っていますが、これは、恐らく、202以前の車はボンネットは、柔らかいが、すぐにエンジンヘッドカバーにぶつかり、ダメージが大きかったため、補強材を柔軟にし、トランポリーのようにしていると思われます。また、フロントの高さ、傾き等は、歩行者にダメージを与えないように決められています。スリーポインテッドスターのマスコットが倒れる構造になっているのは、歩行者対策の一部です。
(2003/6/14)
Z  メルセデスのダッシュボードを爪を立てて押したことはありませんか?押したことろが凹みませんか?そう、実は、メルセデスのダッシュボードは、衝突事故時に頭部や顔面をぶつけてもダメージを少なくするため衝撃吸収構造になっているのです。J国の車は今だにガチガチの硬いプラスチックで造られている車があります。確かにエアバッグの普及に伴い、ダッシュボードに体の一部をぶつけることがなくなったのも事実ですが、それは、衝突試験のような事故に限ります。高速道路上での多重衝突事故を想像してみて下さい。何回も車があちことにぶつかります。エアバッグやベルトプリテンショナーは、一回作動すると二度と作動しなくなります。つまり、車が何回もぶつかるような事故の場合、一回目の衝突ではエアバッグ等が人体を保護してくれますが、二回目以降の衝突では、ベルトの拘束力もなくなり、人体は、内装のあちこちにぶつかることになります。頭部や顔面は、ダッシュボードやハンドルにぶつかり、もし、ぶつかった先が硬いものだったら生命が危険にさらされる恐れがあります。そのため、メルセデスは、ダッシュボードを衝撃吸収構造にしているのです。結論は、エアバッグが普及しようともダッシュボードやハンドルは衝撃吸収構造でなければならないのです。(2003/8/31)


つづく